どうもSymSymです。
この記事は、
「2008年リーマンショックのとき ボクがロシアで経験したこと」
について書いています。
対象:今 ビジネスの最前線で活躍している人
内容:リーマンショック後の18か月で起きたこと
伝えたいこと:囁かれる経済危機に対する準備の必要性
■2008年リーマンショック前夜のロシア市場
2000年プーチン大統領誕生以来、ロシアの経済成長は著しく、好景気は実に7.5年間継続。BRICSと呼ばれる新興国ブームの始まりが2003年。特にパワフルに成長していた4か国の頭文字からBRICSと名付けられたが、ロシアはそのBRICSの一角を担っていました。
まさにリーマンショック前夜の2008年夏まで、ロシアはイケイケの景気絶頂期。
あらゆるものがブラックホールに吸い込まれるかの如く、飛ぶように売れていくような状態。
ボクは、当時 ロシアで 自動車(完成車)の卸営業をやっていましたが、売れに売れまくる商品のデリバリーをいかに滞りなくまわすか、在庫ショートや物流手違いなどで販売機会損失をしないか、というところがトッププライオリティ。それに加えて、宣伝/広告費もふんだんに使って売りまくっていました。
リーマンショックは、
そんな経済バブルの絶頂、アクセル全開の中での「クラッシュ」でした。
■リーマンショック後、ロシア経済凋落
「高速道路をアクセル全開で走っているときにクラッシュ」
それが ロシアにおけるリーマンショックの印象。
リーマンブラザーズはアメリカの証券会社であり、この経済危機の震源地はあくまでもアメリカ。
ただ、その影響は世界を巻き込み、中でも最もダメージを受けた国の一つがロシアだと確信しています。
その理由は、「ロシアが天然資源価格依存型」の経済構造。
順番に説明すると、
リーマンショック前、ロシアの景気拡大を支えてきた原動力は「原油高」
↓
原油高により
「海外から所得移転があり内需拡大」+「力強いルーブル高で消費ブチ上げ」
↓
さらにロシア企業が原油高を背景に海外から巨額の資金を調達、事業に投入
↓
このロシア経済絶頂期に リーマンショックが発生=クラッシュ
↓
ロシアからの急激かつ大規模な資本逃避
↓
さらに原油価格急落は、貿易黒字縮小+ルーブル安急進をもたらし
↓
個人消費 落ち込み、経済停滞
↓
資金難に陥り危機的状況に直面
という感じ。
数字で見てみると、
こんな感じ。
原油価格がピーク時から「-67%」。 為替が「-53%」。 株式市場が「-80%」。
(原油価格/株式市場の急落、なんだか今起きている事象と似てますね、、、)
まさにロシア経済は原油価格の急落で「最悪のスパイラル」で落ちていきました。
ここまではマクロのお話。
■リーマンショック後 ボクが経験したこと
続いてミクロのお話。ボクが経験したことについて書きます。
一言でいうと
「27か月分の在庫が溜まり、キャッシュフロー(F/C)がショート」
しました。
これも順番に説明します。
リーマンショックが起き、市場から資本逃避が発生、個人消費が縮小。
ただ 個人消費の縮小は3~4か月少し時間を掛けて縮小していった ※注
↓
自動車市場は 2009年4月以降 前年比-40%台に減少、目の前から市場が消えた
↓
リーマンショック前にオーダーしていた商品が2009年に入ってから到着
市場急拡大を見越して 完全にアクセルを踏み込んでいる時期の生産オーダー
これまでの船積み量を はるかに凌ぐボリュームで続々到着する
自動車は売れない、一方で日本からの新車が次々積み上がっていく状況
↓
在庫が急激に膨らむ
保管場所に納まりきらず、新しい保管場所を次々に契約して在庫管理
それでも 荷降ろしする場所がなくなり、船に積んだまま海上に数週間滞留
↓
売上げは上がらず、在庫保管料が膨らみ、あっさりキャッシュフローがショート
こんな感じ。
※注
リーマンショックの時は 消費者動向に影響が出るまで少し時間が掛かりました。
9月リーマンブラーズ破綻の3か月後 12月 過去最高の月販台数を記録しています。
この事象の背景は、
・消費者がロシアルーブルの下落を懸念
・手元のキャッシュを価値ある耐久消費財など現物に変えるという行動
が起きたため。
当時、ロシアにおいて輸入車(ドイツ製/日本製)は まさに「価値ある耐久消費財」という位置づけでした。したがい、元々ハイシーズンである12月に ドイツ勢/日本勢の販売が伸び、最後の燃え上がりを見せました。翌1月の販売は前月比‐75%に減少しています。
この販売落ち込みの微妙な時差が、我々の初動の対応遅れにつながったと思っています。
因みに、ロシア自動車市場の急激な減少は↓のグラフの通り。
リーマンショック前の急拡大も相当なもので、まさにジェットコースター状態。
現場の人間としては、急拡大について行くのも 相当苦労していたんですが、リーマン後の急落時は比較にならないほどの“苦労”が待っていました。
まず、膨れ上がった在庫は、最大 瞬間風速で 27か月分あったと記憶しています。
実に自動車の在庫が3年分。
ボクが 当時 毎日ように見ていた悪夢は、
在庫管理のExcelシートが無限に続き、自分の身体に巻き付いてきて締め付ける
というマンガのよう夢。
連日 真夜中まで敗戦処理の業務が続き、 帰宅は早くて12時、遅いときは3時。
それからベッドに入るものの、熟睡はできず、数時間後にまた出社。
しだいに体調に異変が生じ、常に頭痛に悩まされるようになりました。
ボクは今 毎朝 高血圧の薬を飲んでいるのですが、それは モスクワ時代の頭痛から始まったものです。
その後、ボクがいた現地法人は 本社に増資を依頼することになります。
そうして帰任までの18か月 真夜中までの残業が当たり前のように続きました。
リーマンショック前に12人いた日本人駐在は7人に減りました。
任期途中で帰任になることは辛いことですが、リーマンショックの嵐の中に残されるのも辛い。
「帰るも地獄、残るも地獄」
それでも、当時のボクは「帰りたい」というのが本音でした。
残った7人には 数えきれない苦労話があるのですが、でも、まぁ、社内に関することなので ここでは書けませんね(笑)。
あと もう一つだけ。
絶好調だったロシアビジネスを応援してくれていた社内の人たちが、リーマン後になって 急にロシアバッシングを始めましたね。当時30代半ばだったボクは「ほー、人ってこんなものかー」とものすごく冷静に感じたのを覚えています。
その人たちの一人は 未だに当時のエピソードを持ち出しボクを責めることがあります。本人は冗談のつもりかもしれませんが、僕にとっては「背中の十字架」のように刻まれた記憶です、顔は笑っていますが、毎回 心を痛めます。
■今新たな経済危機の可能性を前にボクがしていること
2020年3月半ば、今日 この瞬間、コロナ感染に端を発する株価急落を受けて
「リーマンショックの再来か」
と叫ばれています。
煽り系のインフルエンサーも多く、
・原油価格の急落
・株価急落
に加えて、「ドイツ銀行破綻」なんていうデマも流れており、どうしてもリーマンショックと重ね合わせたい人が多いんだなと思います。
でも、実際、共通点が多いのも事実。
あの最悪の18か月の経験から、今、ボクがしていることは、
・足元の来店数/成約数のデイリートレンド分析
・卸売り側の在庫、販売店側の在庫のデイリーウォッチ
・どこまで生産オーダーにストップ掛けられるかの確認/本社への打診
・当面の販売施策/イベントの見直し
・足元は売れる限り売りまくる
あたりですかね。
今 ボクがローカルスタッフに出している指示は
「とにかく可能な限り在庫を薄く持つ準備をしておこう」
ということ。
今回の経済危機(?)とリーマン時の違いが一つあります。
先にも触れましたが、それは、
「消費者動向に影響が出始めるタイミング」
です。
今回は、コロナの影響で 「経済活動の停滞」と「消費者心理は落ち込み」がほぼ同時に発生し、既に来店/成約のペースに異変が起きています。
この事実にフォーカスするだけで、ローカルは素直にボクの指示を理解して行動してくれる、初動に遅れはないように思います。
■まとめ
本当に新たな経済危機に直面するかどうかはわかりません。
煽るつもりは全くありません。
ただ、
「できる準備はした方が良い」
というのが、20年以上サラリーマンやってて、13年以上海外駐在してるボクからのメッセージです。
ホント当たり前のように聞こえるかもしれませんが、もう一回言いますよ、
在庫で火傷しないようしっかりコントロールしましょう、初動が大事です
最後まで読んで頂きありがとうございました。
なにかの参考になれば幸いです。
~おしまい